笑う経営 平成27年8月

守りと攻め

201508-1今年の8月15日で戦後70年の節目を迎える。戦争末期の捨て身の戦法や原爆投下という悲劇をとおして、日本人には戦争の悲惨さが骨身にしみた。

「戦争は二度としてはならない」 戦争体験者の語るこの言葉をいつまでも人類全体への戒めとして残さなければならない。

しかし、実際戦地に赴かれた方々は90歳前後となり、今後直接戦争体験者から体験談を聞くことのできる機会は、ますます減っていく。そのうちに大河ドラマのような、小説のような、フィクションの世界で語られる世界になっていくのだろうか。

いま国会では安全保障関連法案が審議されている。国民の中でも賛成、反対様々な考えが飛び交っている。紛争が起きたと想定し、紛争が起きた時の体制づくりをいかにすべきかが議論されている。それも大事かもしれないが、紛争ありきでなく、そもそも国際的な紛争が起きないように政治をしてほしい。

201508-2戦争の悲惨な体験を語り継いでいかなければ再び戦争を起こしかねないとは何とも情けないが、歴史を見ても、今でも世界中で紛争の火種は尽きそうにない。

ヒトはなぜ戦争をするのか。大天才アインシュタインでさえもそう疑問を持ち、心理学者フロイトに書簡を出した。

フロイトからの返事は「人間から攻撃的な性質を取り除くなど、できそうにない」という答えだった。フロイトは人間の内にはもともと残虐性が潜んでいて、それが簡単に表面に出るので戦争が起きると考えた。

攻撃的性質が常に表に出ていたら、人類はとうの昔に自滅してしまっただろう。だから普段は心の奥に隠れておとなしくしている。フロイトが嘆いたように、攻撃的性質を取り除けないなら、攻撃性を静かにさえさせておけば、戦争は起きないということになる。

ではなぜ簡単に攻撃的性質に火がついてしまうのだろうか。ある学者によれば、すべての戦争は経済戦争であるという。いいかえれば、富の奪い合い、資源の奪い合い、自国の利益を守るために戦争が起きるというのだ。

戦争とは違うが、フランス革命も、ルイ16世の時代、天候不順、ワインの値崩れなどで人々の暮らしはとても苦しく、経済的に困窮した民衆がついに我慢できずに武器をとり、王室を滅ぼした。当時のフランスの民衆にとって、王室が敵となったわけだが、王室を倒すというより、自分たちを守ることが第一だったに違いない。

インドとパキスタンは隣同士の国で、それぞれ核を同じくらい保有している。インドが核を配備したのは中国やパキスタンに脅威を感じ、自国の安全を保障するため、特に核を保有する中国に対する兵力の劣勢をカバーするため核実験を実施するに至った。

パキスタンはやはり隣国インドの核配備を脅威に感じ、自国の安全保障を強化するため、インドに見合う戦力を持つために核を保有せざるを得なくなった。(参考文献(財)日本国際問題研究所「インド・パキスタンの核実験」1999年)

イスラエルもパレスチナも、お互い相手の行為は武力攻撃で、自分たちは、相手の攻撃から身を守る自衛の戦いだと思っている。

人間には自分の身を守ろうとする自己防衛本能があって、防衛本能が強いと、自己の優位性を保とうとして周囲に対して攻撃的になりやすい。森でばったり出会うクマも人間を攻撃するのは、人間が怖いから自分の身を守るためで、特に子連れのクマは子供を守ろうとするから攻撃性が強いといわれる。

自国の平和のため安全を確保しようとすることが、他国から見れば脅威に見えてしまうから悩ましい。相手もさらに戦力を強化してしまう。この繰り返しで各国とも軍備がだんだん増強し、核軍縮も一向にすすまない。守りと攻めは裏腹で、自国の安全を図ろうと防備をすればするほど、相手の軍拡をすすめることになるとは、なんと皮肉なことだろう。

 

顧客像の描き方

話は変わるが、ビジネスをする場合、どんな顧客を対象とするか、できるだけ具体的に描けといわれる。何歳くらいの、どんな生活スタイルで、興味は何か、性別は、と顧客をイメージし、その対象顧客に合わせた商品・サービスづくり、店づくり、接客をせよというのだが、対象顧客を描くのは、なかなか想像力がいる仕事だ。顧客像を描く段階で挫折してしまいがちだ。

そこでうまい方法がある。実在の誰か特定の人物を想定する方法だ。家族の誰かでもいいし、友人、知人、職場の人、取引先の人、あなたが実際知っている人を一人決め、その人に喜んでもらうためにビジネスをするとしたら、どんなスタイルのビジネスになるだろうか考えてみるのである。実在の人物だから顧客像を具体的に描くことが容易にできる。

六本木にエビカツサンドなどを出すあるカフェがいい例だ。プロデュースしたのは作家、放送作家の小山薫堂氏。映画「おくりびと」の脚本を手がけたことで有名な小山氏が東京のお寿司屋さんでたまたまある美食家アメリカ人と知り合い、仲良くなった。

このアメリカ人は世界中をめぐって美味しいお店を食べ歩き、天才料理人を発掘することが趣味で、ロサンゼルスはビバリーヒルズに住むお金持ちだった。小山氏は彼を驚かせ喜ばせるためだけにカフェを開らこうと考えた。

カフェの名はランディ、メインメニューはカツサンド。なぜならこのアメリカ人は、ランディ・カッツという名前なのだ。

お客様を喜ばせる、誰かを幸せにするという視点でビジネスを行えば、多くの人がハッピィーになる。国と国との関係も、お互い相手の国を幸せにする、豊かにするという姿勢で外交をすれば、攻撃性に火をつけることなく、軍備も不要になっていく。戦争がなくなれば、戦争体験を語り継ぐ必要もなくなる。

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