笑う経営 平成26年12月

 

今月のテーマはズバリ、物を売る技術です。これを読んで売上倍増!販売不振に終止符を。

物が売れる条件

warau201412-1ご存知のように、ただ商品を並べておいてもなかなか売れませんね。お客様が買うためにはいくつかの条件をクリアしなければなりません。

まず、お客様がその商品を「必要なもの」と思わなくてはなりません。良いものと思っても「良いもの」と思ってもらわなければなりません。でも良いものとわかったら、価格が適正か、あるいは適正より少しでも安いと思わせなければなりません。さらにそれを「あなたから買う」理由がなければ買わないのです。

何らかの特別な圧力をかけない限り、この4つの条件のどれかが抜けるとお客様はなかなか買ってくれません。難しくいうと、購買行動を起こしてくれないのです。どれもお客様に「思わせる」ことです。

warau201412-2これを巧みに悪用したのが、未だに止まない振り込め詐欺です。詐欺事件のニュースを聞くにつけ、人はいとも簡単に騙されてしまうことに驚いてしまいます。オレオレ詐欺に始まり、今は架空請求、融資保証、還付金、金融商品買取など、どんどん多様化しています。しかも弁護士、警察官、銀行員まで登場させ(もちろんニセモノ)、いわゆる劇場型という手の込んだ手口へと悪質化しています。

オレオレ詐欺では思い込みと家族愛を逆手にとっています。孫を守るためなら必要で、安いこと。ここで自分が何とかしなければと思い、孫からの電話だと思い込んでいるから本当のことと騙されてしまう。孫の危機と思わせるだけで1から4の全部の条件がクリアされてしまうのです。

実は販売活動においても似たようなことをしています。もちろん架空の話でお金をだまし取っているわけではありません。念のため。ちゃんとした商品を適性な価格で売るのですから騙すのとは違います。お客様の気持ちを4つの条件に合うように、誘導することで正当に購買行動を起こさせるのです。広告宣伝やセールストーク、日頃の営業活動は見込み顧客に4つの条件を常に意識して購買行為へと誘導することが売る技術の基本です。

思い込みのパワー

ここでポイントとなるのが「思い込み」です。特に日本語は全部聞かないと結末がわからない構造になっていますが、前半を聞いた段階で後半が自然とわかることが普通です。文末が予想と違うとびっくりするか、笑いが起きます。落語や漫才はこの仕組みをふんだんに使っています。

春風亭柳昇さんの落語はいつもこの決まり文句で始まりました。
「私は春風亭柳昇といいまして、大きなことを言うようですが、春風亭柳昇といえば、今や我が国では・・・」
聞いている人が、「知らない人がいない」とか「押しも押されぬ名落語家」などと言うのかなと思っていると、「わたしく一人でございまして」と、予想に反しごく当たり前な結論に爆笑。

思い込みを購買誘導に使うとどうなるのか実例を見てみましょう。
例えばある清涼飲料水の説明に、
「燃焼系飲料」「カルシウム、食物繊維を補給。カロリー、脂肪はさようなら。〇〇はアンバランスな現代人の食生活を考えたカプサイシン入り飲料です。カプサイシンは体脂肪の燃焼を促進する作用があるといわれます。ダイエットのお供にどうぞ」
と書かれていたらどうでしょうか。必要なもの、良いものと思わせる言葉が並んでいますね。飲むと体脂肪が燃えて痩せるような気になりませんか?しかしよく読むと、これを飲むと痩せるとは決して書いてないんです。

ある大学の栄養学の先生が実際に調べたところ、
*「燃焼系」とは日常生活を燃焼してほしいという意味で命名した。
*カルシウム、食物繊維は「補給」で終わっている。補給しましょうという意味で、補給できるという意味ではない。
*カロリー、脂肪はさようなら、は「さようならしましょう」の意。
*現代人の食生活を考えた、は文字通り「考えた」だけ。その結果を反映したわけではない。
*ダイエットのお供に、するだけでダイエットできるとは言ってない。
ということがわかりました。広告に対して消費者の思い込みが働き、書いてないことを付け加えて読んでいるのです。もちろんそのように読ませるように意識して書かれてはいますが。
本号冒頭に「これを読んで売上倍増!販売不振に終止符を」と書いてあったこと、覚えていますか。もちろん、倍増してね、終止符を打って下さいね、という意味ですから、あしからず。

盾と矛を売る

昔の中国、楚の国の人で盾と矛を売る人がいました。この人の売り文句はすごくて、自分の売る盾を誉めては「私の盾は頑丈で、貫くことのできるものはない」と言い切る。また矛を売る時は、矛を誉めて「私の矛は鋭くて、どんなものでも突き通すことができる」と言い切ります。ところがある人に、
「あなたの矛でその盾を突き通したらどうなるのか」と聞かれ、その商人は返答に窮してしまいました。

中学で習った「矛盾」のいわれとなる有名な故事です。盾と矛を良いものと思わせる(条件2)ための必死な売り文句だったんですが、必死のあまり、つじつまが合わなくなって墓穴を掘ってしまったという結末です。中学生当時は、なるほどと感心していました。あれから40年!今はこの話を素直に感心できないほど成長しました。

何しろああ言えばこう言う、したたかな中国人です。しかもこれだけの売り口上を堂々と言う商人が、簡単に返答に窮するでしょうか?黙って引き下がるはずがないと思うんです。ではこの商人はどう答えたら良いでしょう。うまい返答が考えられないでしょうか。

高くしても売る

高いほうが売れるには条件があります。高いほど良い、という関係が成り立っている場合に限ります。アメリカの例です。ある宝石店で観光シーズンに合わせ、値段の割には質の良いトルコ石を陳列しておいた。店は客であふれていたにもかかわらず、お値打ちのトルコ石は一向に売れない。店長は頭にきて全部2分の1の価格で売れと売り場担当にメモを渡して買い付けに出かけました。数日後帰ってくるとすべての宝石が売れていました。さすが半額にすれば、良いものが安い(条件3)わけだから売り切れて当然だ、と店長は納得。

ところが実際は担当が店長が殴り書きしたメモの1/2を2と間違え、売値の2倍で売ったことがわかりました。店長はびっくりです。2倍にしたことで客はこのトルコ石を初めて良いもの(条件2)と認識したのです。安さ(条件3)も損なわれなかったのでしょう。

盾も矛も売る

さて、盾と矛のうまい返答は思いつきましたか?どんな矛にも突き通せない盾、どんな盾も突き通す矛、一体矛でこの盾をついたらどうなるか、興味津津、知りたいですよね。こう言えばどうでしょう。
「どうなるかはやってみれば一目瞭然!是非この盾と矛を買って、実際に突いてみて下さい。」

This entry was posted in 笑う経営. Bookmark the permalink.