笑う経営 平成28年4月

夢を現実に

201603-1ある本にこんなことが書いてあった。

「現実世界も本当は夢、周りの全ては自分の思い込みによってつくられている夢の世界である」と。

現実が夢であれば、今までにない壮大な夢、楽しい夢、心躍るような夢を選ばなければ損だ。

モーターで世界トップシェアの日本電産。社長の永守重信氏は「大ぼら」を吹くことで名高い。 創業時には、京都で一番高いビルを建てるという夢を抱いた。当時京都で一番高いビルといえば京都ホテルで50メートルくらい。ちなみに東寺五重塔が57m。

201603-260メートルのビルを建てれば一番になれると目標を立てたが、同じく京都に本社を置く京セラが地上20階94.82mの本社ビルを建てたため、一気にハードルがあがってしまった。

しかし2003年、地上22階、高さ100.6mの本社ビルを建て、30年かけて夢を実現した。最上階の社長室からは京セラの本社ビルを見降ろせるというおまけつき。

また月の売上が20万円のとき、目標1億!、ニューヨーク証券取引所に上場する!と宣言した。何の根拠もない。言った時は可能性ゼロだった。しかしこれも宣言してから30年後の2001年に実現してしまう。日本企業で15番目である。

今も、2020年に売上2兆円、2030年に10兆円と大ぼらを吹き続けている。いや大ぼらではない、壮大なビジョンを描き続けているのだ。すでに2020年の2兆円は、大ぼらから夢へと変わっているという。永守氏にとって夢は必ず実現させるもの。過去の成長率から考えて実現は見えているという。

いくら夢を持っても現実に行動を起こさなかったら実現はしない。行動を伴わない夢はもとより夢とはいえない。本当のホラとなってしまう。その点、永守氏のモットーは「すぐやる、必ずやる、できるまでやる」である。日本電産創業時、社員は永守氏を含めて4人。プレハブ小屋でのスタートだった。グループ社員10万人となったいま、そのプレハブ小屋は本社ビルのホールに保存展示されている。

なんの人脈もない立ち上げたばかりの企業だったが、永守氏は顧客を探すため単身渡米。電話帳を見てかたっぱしから電話営業をかけた。このとき運良く3M社が反応してくれた。「テープレコーダのモーターを小型化したいが、モーターをもっと小さく出来ないか」という要望だった。

永守氏は「もちろんできます。今より3割小さく出来ます」ホラともいえる大見得を切った。このときも根拠はなかった。 帰国するや小型モーターの開発に明け暮れ、半年後完成させる。プレハブの町工場が世界的企業と契約することとなった。

普通、夢は実現しないものといわれる。だが永守氏はほとんどの夢を実現している。夢どころか、何の根拠もない大ぼらからスタートしている。永守氏の大ぼらは、やがて中ボラになり、小ぼらになり、夢になる。そして夢から目標に変わり、いつの間にか現実となっていく。

永守氏を含めてホラ吹き三兄弟と呼ばれる経営者がいる。永守氏とソフトバンクの孫正義氏、ユニクロの柳井正氏だ。三人に共通するのは大ぼらと言われるような壮大なビジョンを描くこと。3社の業績を見れば、これら社長のいうことは単なるホラではなく、きちんと結果を出している。ただ可能性が全く見えていない段階で先の先を見据えたビジョンを口にするから、ホラにしか聞こえないのだろう。「こうなったらいいな」という空想ではなく「こうなるぞ」という強い意志から出ている言葉なのだ。

永守氏は毎日16時間仕事をする。休むのは一年で元旦の午前中のみ。「社員は放っておいたらどんどん怠けるが、社長が怠けたら社員はもっと怠ける」と考える。従業員だけ働かせて自分だけ遊ぶことは許されないのだ。

花瓶を床で叩き割ったり、ものを蹴飛ばして部下を激しく叱責する永守氏だが、社員の夏と冬の賞与袋に自筆の手紙を同封したり、マイナス思考から抜け出せない部下を日曜日ごとに自宅へ呼び、午前10時から午後10時まで説得に努めたなど部下の心に働きかける努力もしている。

「夢を語り、夢を形にするのが経営者の役目」と永守氏はいう。そこに社員がついていく。社員がやる気を出し、成長していく。激務でありながらブラック企業とは紙一重違う。違いは、会社に大きな夢があり、社長が率先して働き、社員が社長の理念を共有し、自ら喜んで働いているかどうかだ。

ではなぜ永守氏や孫氏や柳井氏のような経営者はホラを現実にしているのだろう。鍵は「行動」にある。なぜそんなに熱意ある行動力が湧いてくるかに秘密がある。

それはかれらのビジョンが頭で考えたものではなく、心から自然とにじみ出たものだからだろう。例えばあなたの好きなもの、好きなことを考えてみて欲しい。それをやることは全然苦にならない。時間があればずっとやっていたいと思う。でもなぜそれが好きかと問われても、たぶん説明できないだろう。好きだからしかたがないとしかいいようがない。

結果を出す経営者のビジョンの持ち方はそれに似ているのではないだろうか。だからビジョンに向かってどんどん行動ができる。苦労が苦でなく、楽しいとすら思える。

そしてもう一つ重要なことがある。「心理的制限を与えない」ということだ。何かを実現したいと思った時、それが大きければ大きいほど、そんなことは自分にはとても無理、という心理が働く。 現代人はたくさんの情報が与えられているし、論理的な教育も施されている。想いをコントロールできるようになっている。良いことではあるが、反面常識的な考えにとらわれすぎ、希望を描けなくなっている。希望を描いてはいけないとすら思っている。諦めを抱くのも早い。今の日本人が全体的に元気がないのもこのあたりに原因があるようだ。

永守氏のような経営者は、抱いた思いに心理的に制限をかける働きが生来的に欠如しているのではないだろうか。だから自分の想いに制限をかけず、存分に情熱を傾け、熱意と執念を持って行動し続けることができて結果が生まれる。

あなたも心からにじみ出た想いや目的を抱いたら、心の制限をはずして、思う存分情熱を持って取り組んでみて欲しい。永守氏は言う。未来は予測するものでない、創るものであると。

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