笑う経営 平成29年3月

先日、還暦を祝う会として高校の同窓会が行われた。卒業して42年が経って、すっかり老けてしまった人もいれば、中身はともかく見た目があまり変わらない人もいて、人それぞれ。当時若手だった先生と元生徒の見分けがつかなくなってきた。

風貌はそれなりになっても、頭の中身はどうだろう。自分でもまるで進歩が感じられない。未だに16歳くらいの感覚だ。

70を少し過ぎた隣のクラスの担任の先生が「おい授業を始めるぞ」と言ってスピーチに立った。君たち60になったくらいでお祝いなんかしてるんじゃない。60歳なんておしめが外れたばかりのようなもんだ。きんさんぎんさんを見ろ、100歳でお祝い金をもらったとき、使い途を聞かれ、老後の蓄えにとっておくと言った。120歳の泉重千代さんは、年上の女性が好みだと言ったぞ、と会場を笑わせた。

日本の100歳超えの人口は平成になって急速に増え、1963年に153人だったのが今や6万人以上という。これからもっともっと増えるだろう。 しかも元気で若々しい百歳が。 手元に「百寿を達成する12の条件」という文藝春秋(2016年6月号)の記事がある。慶応大学の広瀬信義教授が20年以上に亘って「元気に百歳を迎える方法」を研究してきた成果がまとめられている。とはいえ百歳まで確実に生きられる方法が完全に解ったわけではない。百歳超えの長寿者の共通点らしきものが浮き彫りになり、それが12の項目に整理されている。百歳まで生きるのはまっぴらという人も、知らずに百歳まで生きる(かもしれない)条件に当てはまっていることをやっていたら大変だ。ざっと目を通しておいて欲しい。

食事 しっかり食べる。といっても腹八分目までという人が多い。肉や鰻が好きという人が珍しくない。高齢者といえば淡白な食事を少量というイメージがあるが、どうもそれとは逆なようだ。あとはしっかり噛むこと。食べるから元気なのか、元気だから食べるのか。

酒・タバコ お酒は寿命に関係ないらしい。それなりに飲んでいる。酒量は晩酌に日本酒を一合程度。そういえば泉重千代さんの長寿の秘訣は「泡盛」だった。

百歳以上の喫煙率は男性3割、女性1割。意外と吸っているように思われるが、広瀬教授によれば、70歳時点に比べれば半分以下に減っている、この差は大きいとしている。また122歳まで生きたフランスの女性が117までタバコを吸っていた例をあげながらも、だからといってタバコの害をあなどってあいけない、喫煙してなおかつ百歳を超えた人は何か他に特別な要因があるに違いない、タバコは長寿の妨げだ、と教授は妙に否定的だ。

運動 独自の体操やトレーニングを考案して日課にしている人が多い。また女性は掃除、洗濯など日頃の家事で身体を動かしているという。同窓会の折り、担任の先生に日頃何をしているか聞いてみたらジムに通っていると言っていた。杖を持っていたが、文字通り、転ばぬ先の杖だそうだ。

性格 女性は、活動的で社交性があり意志が強く、環境に適応する、依存心が少ない人。男性は創造的、好奇心が旺盛、依存心が少なく、飄々としてマイペースな人が多い。

医者との関わり方 身体の異変に早く気づき、気づいたらすぐ医者に行き、医師の指示をしっかり守る人。

幸せ感 幸せ感は当然ながら高い。まだまだ数十年は死なないと思っている(人もいる)。

趣味と恋 好奇心旺盛な人が多いので趣味、向学心が高く、刺激を求めるためかスポーツ観戦も大好き。なぜか国会中継が人気があるようだ。そういえばぎんさんも国会中継を観るのが楽しみと言っていた。女性はメイクをきめるなど、おしゃれ心を忘れていない。

全体としては、さもありなん、当然といえば当然といったところか。百寿を目指して見習ってみては。もっとも長寿の人たちは自覚もなく自然にやっていることだろうけれど。

最近、某大手広告代理店の女性社員が苛酷な労働環境の中、心身共に疲れ切り、自ら命を断ってしまったという痛ましい事件があった。ネットには一日の労働時間が20時間とか、異常なまでのクライアント接待の実態など、この会社に関するブラックな側面が様々流れている。労基署の捜査が入っているが、これまでにも何度も是正勧告は行われていたらしい。どこまで事実が暴かれるかわからないが、社員をここまで追い込んだ経営者の罪は免れないだろう。

この会社では過去にも過労死した社員が複数いるようだ。それを知ってか知らずか、学生にとっては就職したい一番人気の会社である。鬼十則という有名な社員規範があることでも有名で、優秀な社員を極限まで使って会社は大きく利益をあげている、というイメージがある。

もちろん労働法等法令を遵守する限り、どんな社風、社訓、労働環境でも、それは会社の自由だ。またそれを承知の上で、その会社の持つステータス、知名度、仕事内容、給与水準等に納得し、入社するのは学生の自由である。ただ1つ言えることは、百寿を目指す人は社員の幸せを考えない会社は敬遠すべきだ、ということだ。

経営の神様、松下幸之助氏(パナソニック)は百年先の社員に向かって話すつもりで経営哲学を論じた。常に社員に夢を与えることと、社員と連帯感を持つことを心がけたという。出光興産の創業者、出光佐三も「社員と仲良く」が基本理念の一つで、経営者と社員を対等に置いた。だから出光興産には労働組合がなかった。

笑う経営の神様、塚越寛氏(伊那食品工業)も使用者と労働者という区分はあってはならない。社員を使って稼ぐという意識は持つべきではない。経営者も社員も家族であり仲間であると考えてきた。だから伊那食品には労働組合はできなかった。
また「会社は永続させてこそ価値がある。百年先を考えて行動する」ことを重視して次のように述べている。

会社の最大の存在価値は「永続すること」だ。なぜならば、そもそも会社とは社員を幸せにするための組織であり、仕組みである。社員やその家族の幸せを実現し、維持しながら地域や社会に貢献できる事業を展開していくのが会社というものだ。しかし、会社が倒産し永続できなくなったら社員とその家族の幸せを断ち切ってしまうことになる。仕入先や顧客にも迷惑をかけるからだ。黙っていたら会社は永続できない。その中で永続できるように力を注ぐのが会社経営というものだ。

This entry was posted in 笑う経営. Bookmark the permalink.