笑う経営 平成27年6月

心を込めて

warau201506お団子やお餅がとてもおいしいお気に入りの和菓子店に、友達と柏餅を買いにいった。いつもはおかみさんが明るく応対してくれるが、この日の店員は息子さんだろうか、若い菓子職人風の男性だった。

友人が柏餅は翌日まで大丈夫か聞くと彼は、「固くなりますね」と硬い表情で答えた。やや間を置いて「食べられなくはないですが」と続けた。

また彼女は大福についても同じ質問をした。店員も先ほどと同じ硬い言い方で、「固くなりますね」「食べられないことはないです」と素っ気ない返事を繰り返すばかりで、お店の人は終始硬い態度を崩さなかった。

「多少固くなりますが、一日くらい大丈夫ですよ」とか、「一つずつラップにくるんでおけば固くなるのを防げますよ」とか、折角おいしいお餅やおだんごを売っているのだから、搗きたてお餅のように柔らかい応対ができないものか、残念だった。

「誠に申し訳ございませんでした」 不祥事を起こした企業、警察、学校、公共団体、芸能人などの謝罪会見で、代表者が謝罪の言葉を述べ頭を下げてはいるが、申し訳ないという気持ちが全く伝わってこない会見をよく見かける。なかには謝罪どころか、ワァワァ泣いてた人もいたが。 特に企業の記者会見は、マスコミ報道によって「トップの顔」を知らない社会に対して、マスコミを通じて初めて「トップの顔」と「人なり」を知らせる「場」でもある

とりわけトップの言動を社会に最も感情的に伝えるテレビの記者会見は、諸刃の剣である。組織のトップはこのことをよくわきまえて記者会見に臨まなくてはならない。

なのに記者会見の重要性を全く認識していないと言わざるを得ない経営責任者が多い。原稿棒読みで謝られても、「謝る気がないな」と一層反感を持たれるだけ。謝罪の言葉を述べればそれで許されるとでも思っているのだろうか。

私たちは人が発信する情報を言葉だけで受け取っているのではない。①話の内容(言語情報)はもちろんだが、②話している人の表情(視覚情報)、③声のトーン、速さ、高さ(聴覚情報)も同時に伝達されている。

warau201506-2驚くべきはこれらのウェイトだ。言葉が主で、見た目や声、話し方はつけたしと思ったら大間違いだ。心理学者メラビアンが1971年に発表したところによると、話している相手から受ける情報全部を100とすると、①言葉による情報はたったの7%しかない。一方、②表情からの視覚情報が55%、③話し方と声の聴覚情報が38%。つまり相手から受け取る情報のほとんどが視覚、聴覚情報で、言葉の方がおまけなのだ。これをメラビアンの法則という。

初対面の人は間違いなく、第一印象は見た目で判断されてしまう。人を見た目で判断してはいけないといったところで見た目が9割なのだからどうにもならない。

身だしなみを整える、表情、しぐさを工夫し、話し方、声のトーンを磨くことが先決だ。第一印象をよくするポイントは、笑顔、適度なアイコンタクト、姿勢、そして声。

特に話し方には心を込めること。謝るなら心から謝る、感謝するなら心からありがたい気持ちを込める。言葉の内容を伝えるよりも想いを伝えるつもりで話せば、おのずと声のトーンや高さ、抑揚が適切な話し方になるはずだ。

不祥事は起こさないことが一番だが、完全に防ぐことはできない。起きてしまったら、適切に早く修復することが大事だ。隠ぺいや責任逃れは、修復するどころか傷口を広げるだけである。非を素直に認め、心のこもった謝罪と再発防止を誓うことで事態修復に努めたい。

またこうした危機的場面でのコミュニケーションの原則はそのまま顧客と良好な関係を作る場面でもそっくりそのまま使える。接客に活かそう。

 

危機に備える

企業のリスクは不祥事のほかに自然災害がある。昨年の御嶽山噴火は登山者にとっては、まさに予期せぬ突然の災害だった。楽しい登山が一瞬にして命を奪う修羅場と化した。

大地震が起きることが予測されているとはいえ、それがいつ起こるのかはわからない。突然起こる災害に対して、備えあれば憂いなし。全てのリスクに備えることは不可能だが、いつか起きる災害にあらかじめ対処しておくことは必要だ。

ところが、災害が起きた直後は防災意識が高まるが、しばらくたつと風化してしまう。

例えば、中小企業庁では自然災害、テロ、新型インフルエンザの流行など、不測の事態で事業が中断した場合、早期復旧策を事前にまとめておくマニュアル、事業継続計画BCP(Business Continuity Plan)をネットで公開している。

政府は2020年までにBCPを大企業は100%、中小企業では50%の企業で策定することをめざしている。

2011年の震災前は策定済みが25.8%だったが、震災後2013年は40.4%にはねあがった。ところが2015年1月のBCP策定済企業は40.8%と横ばいで伸び悩んでいる。BCPの存在すら知らない企業が多いことと思う。

会社を守るために、災前の最善策として、どのような備えが必要なのだろうか。不祥事と違って自然災害発生そのものを防ぐことはできないが、発生したときの被害を最小限に食い止めること、災害によって一時中断した操業をいかに早く再開するかという視点で方策を立てておくことである。

具体的には以下のとおり。できる対策は今のうちに。
①業務を止めない工夫(流通業:物流センターに自家発電機設置/運送業:他の運送業者と燃料やドライバーを融通しあう)
②安否や被害状況が確認できる手立て(衛星電話を使ってやりとりする)
③業務再開の優先順位を決めておく(酒造会社:どの銘柄から再開するか決めた)
④供給網(仕入先)の分散 
⑤生産拠点の分散
⑥輸送網の確保 
⑦データを複数バックアップ  

ところで今月は原稿の締め切りを過ぎてしまった。心から謝罪したことはいうまでもない。誠に申し訳ございませんでした。

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