笑う経営 平成27年10月

紙の電子化

201510-1西暦に0か5のつく年は5年毎に行われる国勢調査の年となります。先月末には調査票が配られ、今月20日までに回答することになっています。

また今回から紙の調査票に先立ち、インターネットでの回答ができるようになりました。5分~10分程度で済むので、パソコン、スマホが使える人は大いに活用すべきです。

なにしろ国民全世帯が対象だから、調査を行うに必要な紙といったら膨大な量になります。また配布して回収する(郵送でも可)調査員の労力も結構大きいものがあります。

加えて今回は紙の調査とは別にインターネット回答のための資料やパンフレット、利用促進のチラシなどが配られたため、さらにコストと調査員の仕事が増えています。

201510-2調査の結果が国民の生活向上にどの程度役に立っているかわかりませんが、調査コストはできるだけ削減し、その分福祉や社会保障にまわしてもらいたいものだと思います。

紙にまつわる問題としては領収書の手貼りがあります。これがなかなかバカにできないコストで、ビジネスマンが経費を精算するために手貼りで領収書を貼る作業時間を人件費換算するとどのくらいになるかとうと、日本全体で約6,000億円と言われています。またその領収書類の保管費用に3,000億円かけているとの試算が出ています。合わせて9,000億。なかなか大きな数字ですね。

会計資料は税務申告の問題がからむので、会計事務所では顧客に領収書をスクラップブックなどにきちんと貼るようにお願いしてきました。事業としては直接利益に結びつかない作業なので、できれば省略したいというのが本音でしょう。本業で手一杯の個人事業者などは、どうしてもおろそかになりやすい部分です。

IT技術やデジタル機器の進歩で、紙の文書を電子的に保存できるようになりました。紙文書をできるだけなくし、データとして保存し活用すれば紙そのものや保管費用が削減できます。

現に多くの企業では文書をスキャナで取り込み電子化して活用していますし、ある企業では領収書をデジカメで撮ってメールで送って精算を済ませる方法をとっているところもあります。

その点、最近お医者さんのIT活用には目を見張るものがあります。街の小さな医院では、紙のカルテにせっせと書いているお医者さんもいますが、病院などではたいてい診察室の机の上にはパソコンがあって、医師はそこにどんどん打ち込んでいます。中には患者さんの顔をほとんど見ないで、画面ばっかり見ているお医者さんもいて、さすがにそれはどうかなと思いますが、患者用のモニターもあって、去年の健診結果や、さっき撮ったレントゲン写真がすぐに写しだされ、とても便利になっています。さらに会計へと連動していて、精算もスピーディです。 領収書もいちいち貼らないで、どんどんスキャンして電子化してとっておけば楽ですが、税務上はちょっと悩ましい問題があるのです。

ご存知のように、領収書類は税法上7年間の保管が義務付けられていて、それが「原則として紙による保存」と決められていることです。だから企業では膨大な領収書をノートやスクラップブックにせっせと貼りつけて保管しているのです。こうしてペタペタと書類に貼りつけられた膨大な数の領収書は、そのまま7年間も保存されていることになるのです。ほとんど使われないのに。

 

帳簿も電子化

でも、領収書を電子化して保存する方法もあるにはあるのです。実は「電子帳簿保存法」(1997年施行)という法律があって、これに沿って処理を行えば領収書を電子保存できるのです。

だがここでも問題が。この法律、厳格すぎるんです。従来の電子帳簿保存ルールでは、まず電子化の対象となるのは3万円未満の領収書のみ。これでは結果的に紙のままのものと、電子化されたものの2種類の領収書を保管・運用する必要が出てきてしまいます。

また電子化するためのスキャナーにも決まりがあって、持ち歩けるハンディタイプのスキャナーは使用不可。なぜかガラスの原稿台が付いたスキャナーでの利用しか認められていません。さらに、電子化された領収書には、国税庁が定めた認証局が発行する電子証明書とタイムスタンプの付与が必須とされているため、新たなシステムの導入が必要となります。

これだけきけば、ほとんどの企業が領収書の電子化をあきらめますよね。

ところが今年、電子帳簿保存法が改正されました!(2015年9月30日施行、2016年1月1日適用)電子化への足かせが随分緩和されています。主な改正点は次のとおりです。
・3万円以上の領収書も、全ての契約書等の電子保存が可能に。
・帳簿の電子保存の承認、電子署名の廃止。これに代えて入力者又は監督者に関する情報を確認できることが要件に追加
・見積書等、重要度の低い証票では、スキャナ保存の際に必要とされていた書類の大きさに関する情報の保存が不要に
・カラーでの保存でなくても白黒でも可に。

ちなみに従来より、会計ソフト等で最初から帳簿等を電子データで作成した場合は、そのまま電子データで保存できますので、わざわざ紙に出力して保存する必要はありません。

電子保存する場合は3ヶ月前までに届け出することになっています。10月に申請すれば来年2月から実施できます。

 

電子化は情報化

文書の電子化をうまくやれば紙文書の保存コストや事務作業時間を削減することができます。しかし企業において、文書を電子化するメリットはそうしたコスト削減だけではありません。

お医者さんの例を思い出してください。文書の電子化は情報の伝達、共有、活用の面で、紙文書のやりとりとは比較にならないほど早くて効率的です。それだけサービスの向上につながり、生産、営業など企業のあらゆる側面で攻めの経営につながること。すなわち企業の競争力を強化することに他なりません。

本もスマホや電子書籍閲覧端末で読むようになってきました。ひと頃は、紙の本と電子書籍のどちらが読みやすいかが論じられました。今はそんなことより「電子書籍なら必要な本が60秒で手に入る」ことを重視すべき時代になっているのです。

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