笑う経営 平成26年9月

1)目的を忘れない

 

茗荷の子顧みられぬ影を置く (西川雨州)

 

2014-08-21夏、庭のほんの狭い範囲ですが、今年も茗荷竹が生い茂りました。その根元にミョウガの子がひっそりと顔を出し始めています。食用にするなら花が咲く前がいいのですが、気づかないでいると、いつの間にか淡い黄色の花をひっそりと咲かせています

ミョウガに加えて、今年からは大葉も100%自給できるようになりました。大葉は、去年もらって植えた大葉が種を撒き散らしていたらしく、庭のあちらこちらにたくさん生えてきました。どちらも薬味として、夏の暑気を払う格好の食材です。

何もしなくても地下で根をはり、毎年しっかり茎を伸ばしてくるミョウガ。いつの間にか種を蒔き少しずつ範囲を広げて生き延びる大葉。その生命力に学ぶべきものを感じます。

2014-08-21 -2我が家ではミョウガと大葉には全く不自由しませんが、どちらも自給できなかったとしてもそれほど不自由はしません。もっとも、ミョウガも大葉も勝手に育って、全く手がかからず栽培できるから自給自足できてもあまり自慢にはなりませんね。

気になるのは国の食料自給率です。農水省が8月5日に発表したところによると、2013年度のカロリーベースでの食料自給率が4年連続39%となりました。これは、アメリカ、ドイツ、オーストラリア、観光などの先進諸国の中で日本の食料自給率は最低水準です。

2014-08-21 -3政府は食料自給率の向上を目指していますが、過去最低の水準からなかなか抜け出せないでいます。

国内産のコメの需要は増えたが、小麦と大豆の生産量が減ったため自給率は変わらなかった、と分析されています。小麦と大豆の生産減は天候不順が原因らしい。コメの需要が増えたのは4月の消費税率引き上げによる駆け込み需要というのだから、はたして実質的に需要が増えたといえるのでしょうか。

一方で、過剰米、米価の下落が伝えられています。理屈で考えれば、輸入小麦などをやめて、余ったお米に消費を振り向けば一気に解決しそうなんだけれど。もちろん実際はそんな簡単な話ではありません。

決して米と麦だけの問題ではないけれど、ここ50年、米食からパン食への食生活の変化は食料自給率低下を招いた大きな要因であることは間違いないようです。戦後アメリカの穀物輸出政策などを受けて、日本はすっかりパンや牛肉を食べる国民になってしまいました。(させられた?)また、いいのか悪いのか、困ったことに日本人の作るパンが、やらた美味しい。これではパン食からなかなか抜け出ることはできないでしょう。

食料自給率の話は尽きないのでこのくらいにして、農水省の発表に戻ります。この発表の中で一番気になったことは、
「農水省は自給率を20年度に50%にする目標を立てているが、達成は絶望的とみており、今秋から目標を引き下げる議論を本格的に始める方針だ」という点です。

目標というものは、達成できそうにないからといって安易に変えてよいものでしょうか?時期を延ばすのならまだわかりますが、目標値そのものを引き下げるとは、そもそも国の自給率目標値に確固たる信念がなのではと言わざるを得ません。

世界で何が起きても、食糧不足に陥らない国づくりを理念に据えれば安易に数値の引き下げはできないはずです。

事業経営でも全く同じで、売上目標や利益目標をかかげ、うまくいかない度に目標値を変えていたら会社の進歩はありませんね。商品を変えたり営業方法を変えたり、あの手この手で工夫して、目標を達成するのが企業経営ですから。

成功の秘訣は「目的を変えないことにある」といわれます。

カリフォルニアワインといえば、少し前まではフランスより安くて果実味に満ちて楽しめるワインでした。今では良いものになると一般的なフランスワインより高価なものも多くなってきたという。決してカリフォルニアワインが自然とそうなったのではないのです。

モンダヴィ一族は1916年頃から最高級を目指してぶどうをづくりに励んできました。現在のロバート・モンダヴィは1965年に一族から独立してワイナリーを創業し、欧州ワインより優れたワインを作ることを目標に定めてワインづくりを続けてきました。その結果、欧州ワインを越えるほどの評判と繁栄を勝ち得ることができました。

 

2)倒れない会社の秘訣

大きな目標ほど遠くを見据えなければなりません。そしてゆっくりでも確実に成長していくことです。伊那食品工業の本社敷地内にあるユリノキが台風で折れたことがありました。年輪の幅が広い種類だったそうです。

少しずつ育つ、年輪の感覚が詰まった木は強い風でも倒れないが、早く成長した木は風で倒れやすいものです。

同様に、一時の景気や時流に乗って急成長を遂げる企業もありますが、こうした企業はブームがされば廃れるのも早いのです。

時流に乗って成長を図るもの大切です。世の中の動きはすなわちお客様の動きですから、それを敏感に感じ取ることは企業経営にとって大切です。笑う経営のお手本、塚越経営哲学ではそれをトレンド軸と呼んでいます。間違ってはいけないことは、トレンド軸を経営の主軸に置いてしまうことです。

では何を主軸に置くべきなのでしょうか。それが「目的」です。目的に向かう経営の方向を塚越経営哲学では「進歩軸」と呼んでいます。日本の食料政策でいえば、食料不足をきたさない食料自給体制を作ることが進歩軸になります。進歩軸とそれに沿った目標、たとえば自給率50%という目標は容易に変えてはならないのです。これがいわゆるブレない姿勢です。

2014-08-21 -4日本の食料自給率でいえば、目標値を見直すのではなく、政策を根本的に見直すべきなのです。それを当初目標とした2020年に目標が達成されそうにないからといって、目標そのものを下げるといった愚行を、あなたの企業では間違ってもしないで下さい。理念を簡単に放棄するようなことは決してやってはいけません。今一度、二宮尊徳師の言葉を掲げておきます。

若くて、いや若くなくても夢をもった経営者のあなた、成功の秘訣とは目的がブレないことを忘れない下さい。目先の利益を追わず、常に長い目で経営を捉えてください。

一つのことを忍耐強く続けることです。少しずつ進化させ、どこにも負けない商品、サービスに育て上げることです。長きにわたって成長の種を蒔いていきましょう。

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