笑う経営 平成26年3月

時は金なり

warau201404腕時計のバンドがボロボロになったので、幼なじみが営む時計店にバンド交換と、ついでに整備もお願いした。

40年ほど前、父がヨーロッパ旅行へ行った折、母と祖母にお土産としてそれぞれに時計を買ってきた。二つの時計は同じメーカー、同じデザインの自動巻き腕時計で、祖母がもらった時計を、今私が使っている。祖母の形見として。

実はここ数年、腕時計はあまりしなくなっていた。「時間に縛られる生活はいやだ」表向き、そんな美学を建前にしていたけれど、夏は暑いし、何かにぶつけたりして、ちょっとうっとうしかった。携帯電話があるから腕時計なんて必要ないっていう人も増え、私もそれにならってはめなくなった。
でもやっぱり時間を確認するのにいちいち携帯を取り出すのは案外おっくうなもの。人と話しているときなど、時間を確認しづらいときもある。そんなとき腕時計ならさりげなくできる。そう思ってまた腕時計を使うことにした。こまめに時間を確認して、時間を大切に使おうと思う。時は金なりだ。

時計は金なり

warau201404-2このところの景気回復感と、4月から消費税が上がることなどから高級時計や貴金属の売れ行きが好調だという。

高級時計といえばロレックスという時計がある。非常に人気の高い時計のようで、こんなチラシが入ってきた。

ボロボロでも壊れていても必ずも買い取るという。部品だけでもいいって、すごくないですか。それだけ市場価値がある。欲しい人がいるっていうことだ。

どうしてそんなに人気があるのか、ちょっと調べてみた。

世界的に知名度がある。世界中に支社があり、メンテナンス面で安心。耐久性が優れている。中古でも値が落ちない。換金性が高い。広告が上手い。芸能人がよくはめている、などなど。

このチラシを見れば中古でもよく売れることが伺える。換金性については、世界のどこへ行ってもお金に困ったら売れるそうだ。カジノでもロレックで賭けられるという。うっかりロレックスをして外国など行ったら、下手をすると手首さらもっていかれそうで怖い。いいような悪いような。

ロレックスより高級な時計メーカーはいくつもある。ロレックスは安いので50万円くらいからあるようだが、最低でも100万円以上するというメーカーもある。長野県内の某百貨店の社長はロレックスではないが、400万円の腕時計をしていたらしい。

一般の人がちょっとがんばれば買えなくもない高級時計がロレックスといえるのではないだろうか。だからあこがれるのだろう。ロレックスさえ持てばお金持ちに見られる、などとちょっと考え違いをしている見栄張君たちのおかげで、中古市場に拍車がかかっているのではと思う。

時計は金持ちなり

納税額個人日本一で有名な斎藤一人さんは、お金持ちを相手に商売をするなら「金のロレックスをしなさい」と説く。金のロレックスをしていると「金持ちに見える」「景気よく見える」。お金持ちと商売をする上では、貧乏人にみられたら買ってもらえない。お金持ちはお金持ちからしか買わないからお金持ちに見られないといけない、という。

確かにみすぼらしい人からは買おうと思わないし、流行ってそうもないお店や病院には行きたくない。だからといってロレックスをはめればお金持ちに見てもらえるだろうか。時計だけ高級でも身だしなみ、服装、立ち居振る舞い、言葉遣い、全体のバランスの中でのロレックスだと思う。時計だけ高級だとかえって怪しい人になる。ロレックスをしていても胡散臭く見られたら逆効果だ。

しかも、一般市民がロレックスを見れば「わーお金持ち!」と思うかもしれないが、お金持ちからすると、ロレックスは時計として普通らしい。だからロレックスをしていたところで別にどうってことはない。(と思う)

だいたいお金持ちから見れば、相手が本当のお金持ちか、単にお金持ちらしくふるまっているだけかわかるはずだ。下手に高級品を身につけたところで、すぐに化けの皮は剥がされる。

例えば、あるお金持ちは高校生の頃お小遣いを8万円もらっていたそうです。あなたはどう思います?
「8万!いいね~お金持ちは。月にそんなにももらって」
と思ったあなた(私も)。あなたは2重の意味でフツーの人です。まず月8万が高額だと思ったこと。もう一つ、このお小遣いを月額だと思ったこと。これ週額なんです。

またこの人、大学生の頃、ロレックスをはめていたけれど、周りでロレックスを自慢している人を見て、はじめて自分はお金持ちなんだと思ったという。それくらいお金持ちにとってロレックスは当たり前の時計なのだ。

皮肉なことに、ロレックスに反応した時点でその人は本当のお金持ちではないということになる。ロレックスに平気な人こそ本当のお金持ちだ、といいたいが、ロレックスを知らない小市民も平気な一群だ。

そもそも商売で、売り手がお金持ちだから買いたくなる訳ではない。信用があるかないかである。と一般市民は思うが、お金持ちはお金持ちしか相手にしないのだろうか。どうも高級品をジャラジャラつけている人は嫌味な感じがして私は苦手だ。僻みかもしれないが不信感さえ抱く。

warau201404-3商売をする上で、貧乏たらしくする必要はもちろんないけれど、金持ちを装う必要もない。大事なのは信用度、信頼性、誠実さ、清潔さを感じさせることだ。それは身につけているものより、品格というか、その人が漂わせる雰囲気から伝わってくる。だから人を見抜くには時計だけを見てはいけない。

中国秦時代の古典「呂氏春秋」に人間観察法「八観」が述べられている。人がどの程度の人物かを8つの場面でどのような行動をとるかによって判断する法である。人間とはある状況に置かれた時本性を現すものなのだ。

1、順調な時、何を大切にするかを観よ。2、 地位が上がったときにどんな人を登用するかを観よ。 3、お金ができたときになにを養うか。つまり何につぎ込むかを観よ。 4.その人の言っていることを聴いたら、行いと合っているかを観よ。5、慣れてきたときに何を好むかを観よ。6、学びが深まったら、どんなことを話すかを観よ。 7、人は困るとやぶれかぶれでなんでもやりがちだが、そんなとき何をしない人かを観よ。8、同様に落ちぶれた時に何をしない人かを観よ。

持ち物はいくらでもごまかせる。でも人の態度はごまかしがきかない。人を観る眼を養うのは難しい。昔もこうやって人を判断していたのだ。人の判断だけでなく、自分自身の人としての品格を磨く上でも活用したい。

ところで整備に出した私の腕時計だが、翌日時計店から電話がきた。幼なじみは興奮気味に言った。

「ちょっと、これ、ロレックスだよ!」

This entry was posted in 笑う経営. Bookmark the permalink.