みすず通信 第1号

面接交渉権をご存知ですか

最近も実の母親による幼い子どもの放置事件が報道されていましたが、衣食住が満ち足りたと思える今の日本において、子どもを取り巻く生育環境は決して幸せなものとは言えないようです。

misuzu1私は、離婚の際の親権を巡る紛争が子どもの不幸を招く要因の一つではないかと考えています。

ご存知のように、未成年の子どもがいる夫婦が離婚をする場合、どちらかを親権者と定めなければなりません。そのため親権を巡る争いが起こると、互いに相手を非難しあう泥仕合になりかねません。その結果、親権者となった親が親権者になれなかった親に子どもを会わせないという事態が生じる一因となります。

こうした場合に、法律に明文規定はありませんが、離婚後に親権者になれなかった親が、子どもと面接したり、電話や手紙で交流する権利が認められています。こうした権利のことを「面接交渉権」と呼んでいるのです。

どうしたら面接交渉を実現できるでしょうか

misuzu2そもそも、面接交渉権というと親の権利のように思われますが、面接交渉をどのような場合に認めるかについては、これまで「子の福祉に適うか」という観点から、その可否が判断されてきました。

そうした判断を行うのが家庭裁判所です。家庭裁判所では、子どもの利益を擁護する立場から、子への影響を考慮して、個々の事例ごとの判断をしています。とは言え、基本的には、離婚しても親子の関係は切れず、子の生育には両方の親の存在が必要ですから、親との面接交渉を認めることが、子の利益に合致すると考えられます。

親同士の話し合いで面接交渉が実現しない場合には、家庭裁判所に「調停」を申し立てることになります。「調停」も裁判所における話し合いですから、話し合いで解決しない場合には「審判」に移行します。「審判」では審判官(裁判官)が当事者の主張や調査結果を考慮して判断を下します。

よりよい制度を目指して

misuzu3このような面接交渉の実現を求める調停・審判はこの10年で約4倍と激増しています。

その要因は様々でしょうが、翻ってみると、離婚をした場合に単独親権になるという制度を維持している限り、親権者になれなかった親からこうした求めが出てくるのはある意味当然だといえます。

実は、イギリス、フランス等の先進諸外国では離婚後の共同親権が制度化しているのです。ドイツでは、離婚後の共同親権を認めない法制度は憲法違反だとの判断も示されています。

わが国でも、離婚後の共同親権が法制度として立法化され、親権を巡る不毛な争いがなくなり、子どものためによりよい制度が実現されることが強く望まれます。

もっとも、幸せな家庭を築き離婚しない努力をすることが大事だということは言うまでもありません。夫婦円満が一番です。

面接交渉権については2010年9月8日のNHK総合・クローズアップ現代で取り上げられました。
「親と子が会えない〜増える離婚家庭のトラブル〜」
下記URLより、NHKオンデマンドで視聴(有料)が可能です。
http://cgi4.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail.cgi?content_id=2933
※NHKオンデマンドの視聴には会員登録が必要です。詳しくは、下記URLを参照して下さい。
https://www.nhk-ondemand.jp/

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後記(ご挨拶)

これまで司法の世界は市民生活とはかけ離れた存在で、弁護士も市民からは遠い存在と思われてきました。しかし、裁判員裁判が始まり、司法の世界が今までよりも身近になっていくように思います。
そんな時代の流れのなかで、私も、「社会生活上の医師」として、暮らしの中で起こる様々な法律問題を解決するための身近な存在になりたいと考えています。そのためにも、弁護士からも積極的に情報発信していくことが必要だと考え、「みすず通信」を発行することになりました。
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